あらすじ
リーピア・フラウスは大嘘つき。
いつも欺瞞の魔法でみんなをおちょくります。
北に南にイタズラ三昧。西に東に根無し草。
同属たる魔女相手に『遊び』をけしかけることもしょっちゅうです。
そんな放蕩生活を続けていたある日、リーピアは一人の魔女に出会いました。
『時計の町のホーラ』
彼女は光が透き通るほど白い髪色をした、美しい、でも不愛想な魔女でした。
リーピアはこの町でもいつも通りイタズラをします。
でも、自分の縄張りを荒らされているというのにホーラは止めにやってきません。
本人にイタズラをけしかけてもどこ吹く風。
怒りもしなければ笑いもしません。
ホーラはまるで時計の針のように、きっかりとリーピアをあしらってきます。
でも、ホーラはいつも、どこか浮かない顔をしていました。
何かに怯えているみたいに。リーピアよりも気になることがあるみたいに。
リーピアはそれが気に食いません。だから、彼女は決心をしました。
欺瞞の魔女として、絶対にこの堅物魔女の針を狂わせてやると――――
リーピアはあの手この手の手練手管でホーラに構います。それはもう、構いまくりです。
朝も昼も、夜も。
そのあまりのうっとうしさに、ホーラの冷たい表情がとうとう苦笑いをします。
「あー!笑った!いま、笑ったでしょ!」
「……貴女はいつも楽しそうね。そんなことの為に、わざわざ時間と魔法を使ってまで悪戯してきたの?」
「え?そうだよ?だって、それが魔法を使うってことでしょ?」
「魔法はね!神さまがわたしたち魔女に授けてくれた贈り物なんだよ!――――わたし、神さま信じてないけどっ」
リーピアは、大きく舌を出して笑いました。
そのあまりにもあけすけな『異端』宣言に面を食らったホーラは……
「ふふ、変なの」
そこで、初めて笑いました。
随分と久しぶりに。
思いがけない笑顔の追い打ちに、今度はリーピアが面をくらう番です。
「私も信じてないんだ。神様」
「教会のお抱えなのに?」
「私はただ、お勤めを果たしてるだけだよ」
ホーラの顔はまだまだ晴れていません。
でも、笑った顔を引き出せたことにリーピアは気を良くします。
これがきっかけでもっと絡まれることになろうとは、この時のホーラはまだ知りません。
こうして、堅物魔女と悪戯魔女という二つの針が交わりました。
これは、そんな二人の物語。