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軍人の夫を持ちながら、家事も軍事も英雄譚にも一切興味のない令嬢、アリナ・ビリアス。 夫のギアンが出征した翌週、彼女は執務室で雑務をこなすふりをしながら、戦地からの手紙を机の隅に置いたまま応接室へ向かった。 気づけばその手紙は、書類の山ごとゴミ箱の中だった。 兵糧が届かない。物流が閉ざされている。夫がいる北部辺境は窮地に立たされているという。それでも「ギアンの無口さと鈍感さが掛け合わさればなんとかなるだろう」と都合よく解釈するアリナに、使用人が一言残した。 「ゴミ箱、整理した方が良いですよ」
王子殿下・ルドヴィク・ナナリアスは、幼馴染の王子妃マリアを深く愛している。しかし父である現王の「世継ぎを産め」という圧力から逃れるため、体裁上の側妃を必要としていた。 その駒として選ばれたのが、公爵令嬢エリアス・ビートネアだ。婚約破棄を繰り返されてきた「可愛げのない令嬢」は、王子への恩と親への義理から、渋々その役を受け入れる。 入籍初日、王子は冷たく告げる。「俺がお前を愛することはない」。エリアスは動じることなく、即座に交渉する——書面上、白い結婚にしてほしいと。 王子は約束通り一度も訪れず、王子妃の仕掛けた側妃たちからの嫌がらせ、義母からの「あなたの代わりなんていくらでもいる」という言葉、誰も手をつけていなかった帳簿の立て直す日々。それでもエリアスは淡々と仕事をこなし、屋敷の収支を黒字へと導いた。誰も気づかなかったのに。 三年目の暮れ、王子妃が男児を出産する。待望の世継ぎの誕生により、エリアスの役目はついて終わりを迎える。 しかし、命名式の祝賀にエリアスの姿はなかった。