あらすじ
霧深い谷の正直村には「嘘をつかぬこと」という掟があり、村人は誰も嘘をついたことがないと言い切る。だが移住者の寿司職人・山中宗一郎が台所で刺殺体となって発見され、額には奉納の白晒の花飾り。刑事・矢野が聞き取りを進めても、村人は「出入りした者はいない」「恨みはない」と口を揃え、整いすぎた沈黙だけが残る。神事「偽り祓い」の夜と死亡時刻が重なり、アリバイの曖昧な青年・健太が疑われるが、矢野は“嘘をつかずに黙る”という欺瞞に気づく。やがて床下から山中の日記が見つかり、彼が村の掟と健太を守るため、自らを「他殺」に見せかけて死を選んだ真相が明らかになる。嘘はなかった。ただ、誰も真実を語らなかった。