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終電間際の永田町駅。 起業家たちの忘年会の帰り道、美沙は「何も起きなかったはずの夜」を過ごす。 触れていない。 言葉も多くない。 それでも、空気の温度だけが変わった気がした。 理性で感情に名前をつけてきた男と、 名前をつけないことを選ぶ女。 これは、何も起きなかった夜から始まる、 静かに関係が崩れていく三つの物語。
「英雄」と呼ばれたのは、もう遠い昔の話だ。 左遷された元英雄――ベルネ・クラウス。 かつて革命戦争で魔導部隊を率い、幾度もの戦いを勝利へ導いた中佐。 だが、政争の渦中で「平和を望む」というその性格は、 いつしか味方の中で浮いていた。 三ヶ月前、共和国の命令により北方都市アルトレーンへ派遣される。 名目は“北方駐屯地の軍事調整”。 実際は、都合の悪い英雄を静かに追いやるための人事だった。 凍てつく雪の街。 かつての戦火も歓声も、ここにはない。 ベルネは、与えられた職務をこなしながら、 「もう戦わない平和」を受け入れようとしていた。 だが、その北方では魔導炉の異変が相次ぎ、 街の均衡が少しずつ崩れ始めていた。 やがて、中央から派遣された“技術顧問”を名乗る少女が現れる。 年齢も経歴も定かでないその少女の登場が、 忘れられた英雄の静かな日々を――再び動かしていく。 戦うことをやめたこの世界で、何を信じ、何を守るのか。 それは、誰かの理想ではなく―― ただ、自分の信じる“平和”を取り戻すための戦いだった。