あらすじ
「元気にする店」
巷で噂になることもない不思議なお店。店と主張する看板はない。元気のない人間の日常に突如現れ、客が元気になり退店すれば、その店の存在は忽然と姿を消す。退店した誰かの記憶に残ることもない。そんなお店。
ある日、いたいけな少女が誘蛾灯のように暖かな光を漏らす古構えの店に引き寄せられた。
重厚で頼り甲斐のある木製のアンティークテーブル、その奥に座っていたトンガリつばひろ帽子を目深にかぶる老婆。開口一番に少女の悩みを言い当ててしまった。いわゆる思春期真っ盛りの悩み。若さゆえに考えすぎてしまう無意味な思考。
彼女は言った。
「この店の店主をやるといい。そうすれば君の悩みなど取るに足らないものだと理解し心からげんきになることができるだろう」
少女は理解に苦しんだ。今、己自分は年幼い学生の身分で。どのようにすれはこの経営不審そうな店の店主になることができるのだろうか。そもそも、自分には働いている時間など暇などないのだと告げようとした。
そんな少女も今では立派な店主である。
『店が記す日記〈第七八四六項〉より』