あらすじ
静かな部屋で一日中、時間の流れに取り残されるように過ごす存在。部屋の光は柔らかく、外の季節や天候はほとんど意識されない。日常の繰り返しは単調で、積まれた本や家具、壁や床に染み付いたわずかな感触が、唯一の手掛かりのように感じられる。
そこに、ひとりの男の子が現れる。「よだか、ご飯いる?」と、低く、変わらぬ背丈で声をかける。その顔には微かに笑みを宿しているようにも見えるが、仮面がかぶさっていて、表情の輪郭はぼんやりとしている。時間は止まったように感じられ、男の子は決して成長せず、瞬間も永遠に続くかのようだ。
よだかは、その男の子の顔をはっきり覚えていない。視界の中で、男の子の顔は徐々にノイズに覆われ、やがて歪み、崩れ、溶けるように消えていく。そして、よだか自身の顔も、見慣れた輪郭や特徴が次第に失われ、存在そのものの境界があいまいになっていく。目や口や鼻が空白に置き換わるたび、部屋の静寂が重く深まる。
それでも、よだかと男の子のやり取りは続く――声だけが残り、仮面とノイズの間で、意味のようなものが揺れ動く。日常の断片と身体の感覚が入り混じる中で、よだかは、自分の存在と時間の感覚が溶けていくのを、ただ静かに、しかし確実に感じる。