あらすじ
悪役令嬢シャルロッテは追放された。辺境の村に放り出され、身一つで途方に暮れていた。
蜂がいた。たくさんいた。
普通なら逃げる。でもシャルロッテは逃げなかった。
前世の記憶がある。前世は養蜂家の娘だった。蜂の扱い方は体が覚えている。
「……あら、この子たち、元気ね」
蜂に好かれる体質だった。前世から。
村の端に放置された養蜂場を引き継ぎ、シャルロッテの田舎スローライフが始まる。蜂蜜を採って、村に売って、たまに隣の養蜂家のおじいさんに怒られて。
問題は、このおじいさんの孫が、無口すぎて表情のない青年だということ。蜂を見るときだけ目が優しくなるニクラスは、蜂蜜の味で花の種類を当てる特技を持つ。
言葉の足りないその男は、想いを伝えるとき——言葉の代わりに、一年かけて育てた蜂の蜜を一瓶だけ差し出してくる。
王宮には戻りません。ここの蜂蜜が、世界でいちばん甘いので。