あらすじ
【キャッチコピー】
定時、それは祈りである。
脱線したのは、世界の方だった。
【あらすじ】
三十五歳、独身、私鉄の運転士・高坂律(たかさかりつ)。十三年間、ただの一度も停止位置を誤らず、ただの一度も遅延を出さなかった男。
ある朝、ホームに転落した子供を救い、彼は列車に轢かれて死んだ。
目覚めたのは、剣と魔法の異世界。しかも世界は「閉塞王」と呼ばれる魔王によって各地が封鎖魔法で分断され、流通が止まり、餓えに沈もうとしていた。
困惑する律の前で、村娘が叫んだ。「あんた、その『指差喚呼』ってやつ……古代の聖魔法じゃない!?」
業務でやっていた指差確認が、この世界では失われた高位魔術。安全確認が結界術。運転理論が戦術。時刻表が予言書。──ただ平常運転をしているだけで、辺境の村は救われ、聖女は涙を流し、辺境伯は跪いた。
そして閉塞王の正体は、前世で律をいびり倒した「あの嫌な乗客」だった。
定時で運行し、定時で帰還する。それが運転士の仕事である。