あらすじ
新しいスマホは、
便利になる前に、
“知らない名前”を連れてきた。
――善意の隙間に入り込むものと、
それに気づいた人の、
とても静かな勝利の物語。
………
67歳の小説家は、今日も鼻歌を歌いながらスマホで物語を書く。
閲覧数は、いつも50人前後。
増えなくても、減らなくても、それでいい。
ある日、彼はスマホを買い替えた。
家電量販店でのデータ移行、初期設定――
すべては親切で、完璧だった。
ただ一つ、
「知らない名前」が、最初から入っていたことを除いて。
やがて現れる、
「あなたの端末は危険です」という静かな警告。
電話も鳴らない。音もしない。
それは本物そっくりの“偽広告”だった。
悪者はいない。
店員も、メーカーも、通信会社も、誰も間違っていない。
それでも、善意の重なった場所にだけ、
偽物は忍び込む。
気づいたのは、若者だった。
そしておじいちゃんは、慌てず、怒らず、笑って学んだ。
これはウイルスにやられた話じゃない。
気づいたことで、少しだけ強くなった話。
50人に届く言葉を、
今日も静かに書き続ける人の、
やさしくて確かな成功譚。