あらすじ
祖母の家を改装した一軒家に越してきた美紗は、引っ越しの片付け中に押し入れの奥から古い布人形を見つける。
「MoMoKo」と名付けたのは五歳の娘だった。その名は、美紗が幼い頃に亡き母を呼んだ幼児語に、不気味なほど似ていた。
祖母は人形に触れることを静かに制する。
しかし娘は人形に懐き、やがて夜中に知らない歌を口ずさみ、「MoMoKoが話しかけてくる」と言い始める。
人形はいつの間にか棚から枕元へと移動し、娘の言動には美紗の幼い頃の仕草や、死んだ母の言葉が混じるようになっていく。
押し入れの奥で見つけた古い録音機には、断片的な母の声と子守歌が残されていた。
祖母はようやく語る。母は夜な夜な布を縫い、自らの代わりとなる何かをあの人形に託していたのだと。
やがて深夜、娘が姿を消す。
美紗が追い着いた先の薄暗い部屋に、蓄音機と人形と、鏡があった。
鏡の中の自分の顔は、母の若い頃と重なっていた。
これは愛情か、それとも呪いか。
母から娘へと受け継がれてきたものの正体を、美紗はついに知る。
だが知ることは、救いを意味しなかった。