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三百年間、魔王ヴァルトは「魔王国」を統べてきた。 法があり、文化があり、秩序がある——人間の国と何も変わらない国を。 ある日、人間の国が「勇者」を召喚する。 だがその青年は英雄ではなく、神官たちに魂を書き換えられた生きた兵器だった。 交渉は失敗した。王都は一夜で陥落した。 しかし魔王は——笑っていた。 脱出前の三ヶ月で、人間の国の内側に三十一の「種」を仕込んでいたのだ。 チートなし。武力なし。 ただ「人間の欲・恐怖・愛」を読んで動かす、静かな謀略だけで。 二十年後。勇者を神と崇める宗教が国を腐らせ、 民衆が「英雄は本当に正しかったのか」と囁き始めたその年—— 東の国境を、一人の老いた行商人が越えてきた。 種は、咲く頃合いを待っていた。 魔王は詫びない。急がない。 ただ——正しい場所に、正しい石を置き続ける。 ※勇者=善・魔王=悪の構図を逆転したダーク謀略ファンタジー ※チートなし・ハーレムなし・全12話完結
魔王ゼル=アークは、勇者レクス・ブライトに討たれ、闇の玉座とともに沈んだはずだった。 しかし次に目を開けると、ゼルは白い寝台の上にいた。呼吸し、鼓動し、祈れば光が溢れる“聖女セシリア”の身体で。 周囲は歓喜し、奇跡を求めてくる。この国の聖女は崇拝の仮面の下で「国家資源」として契約と規定に縛られ、拒否権も逃げ道もなかった。しかも聖女の癒しは肉体ではなく“魂”を削る行為で、歴代聖女は二十歳前後で衰弱し、消えるように死んでいった。魔王は自身の魂が入ったセシリアにはその制約は無効化されていて、無制限に使用できると気づく。 護衛として付き従うのはなんと、ゼルを討った“勇者本人”レクスだった。レクスは聖なる力の奥に混じる闇の気配を嗅ぎ取り、聖女の正体を疑った。ゼルは疑いをかわしながら、勇者と共に制度の内側へ踏み込んでいく。 魔王は決意する。命令には従う。だが、言われた通りにも動かない。 聖女として祈り、癒し、微笑み、守る言葉で鎖を締め返し、この国の“聖女制度”という仕組みそのものを、光と理で征服すると。