あらすじ
一九九九年、七月。
終業式の日、女子高生のケイは東京の空に立ち昇る光の柱を目撃し、気づけば四百年以上後の荒野へ落ちていた。
そこは、旧帝都エデンが滅び、魔都エデンが支配する終末世界。人々は《ヒミカ症候群》という名目で狩られ、体内に宿る《姫核》を抜き取られ、死者の名を集める黒い塔《バベル》へ送られていた。
ケイを救った少女ミライもまた、姫核狩りによって名を奪われる。
逃亡組織《ヴァナディース》の炎麗夜、謎のなんでも屋シキ、紅い月の狩人アカツキ、そしてワルキューレの名を背負わされた少女たち。
ケイは旅の中で知る。
この世界は、正しい未来ではない。
帝都エデンが滅びた可能性を何度も繰り返す、終末記録の異位相世界《ヴァルハラ層》だった。
バベルが求めるのは、死者の復活ではない。
女帝ヌルとワルキューレの名を使い、生者を器にし、より美しい統治神話を作ること。
そしてケイ自身もまた、ワルキューレ第一位《アイン》の器として狙われる。
「私は、誰の代わりでもない」
奪われた名前を取り戻すため。
死者を復活させるのではなく、ちゃんと弔うため。
ケイは、自分の名前で終末の塔へ向かう。
これは、滅びた世界を救う物語ではない。
死者の名を利用する世界で、生きている者たちが自分の名を選び直す物語。