あらすじ
四十二歳の男が始めたのは、古い一軒家での静かな動画配信だった。
祖母の家には、夏のあいだだけ玄関に麦茶を一杯置くという妙な決まりがある。冗談のようなその習慣を続けていたある夜、配信の視聴者が「後ろに誰かいる」と騒ぎ出す。
それから少しずつ、家の中にもう一人分の気配が増えていく。
麦茶の減り方。生活音。乱れていた暮らしを、当たり前のように整えていく存在。
夏のあいだだけ隣にいる“それ”は、やがて主人公にとって、ただの怪異ではなくなっていく。
けれど、夏が終われば、同じままではいられない。
季節が巡るたび、玄関の向こうからやってくるものもまた、少しずつ形を変えていく。
麦茶、動画配信、古い家、そして夏だけの気配。
少し怖くて、少しおかしくて、少し切ない。
暮らしのすぐ隣に入り込んでくる、不条理な怪異譚です。