あらすじ
神々の血をひく者が統べ、穢れた者は底に沈む国、常磐國。死者を捨てる湿地で妹・雛を守り、心を殺して生きてきた澪は、たった一つの秘密を抱えていた。父の穢れた死も、母方に流れる禁忌の血も、誰にも知られてはならない。
そんな澪の日常は、妹が国家儀式「比良坂の儀」の生贄に選ばれた夜に砕ける。国じゅうが水鏡で見届けるこの儀式で、選ばれし乙女たちは神の依代に侍り、寵を競う。澪は妹の代わりに名乗り出た。目立たず、還る。それだけを誓って。
けれど神迎えの宮で出会ったのは、誰にも触れられず、いずれ神に喰われて消える定めの少年・斎だった。触れれば双方が死ぬ禁忌の身。それでも国中の目が届かないわずかな死角で、二人は言葉を交わすようになる。
斎に近づくほど、儀式の裏に隠された真実が透けて見えてくる。澪を救い出そうとする幼馴染・直の優しさの底に、何かが潜んでいることにも――。
視られてはいけない。堕ちてはいけない。触れれば、二人とも死ぬ。それでも澪は願ってしまう。「この人を、救いたい」と。触れられない恋の行方を、国じゅうが見ている。
全三部(完結まで執筆済み)