あらすじ
雨はすでに上がっていた。にもかかわらず、王城の中庭は律儀に濡れたままで、石畳の隙間という隙間が「こちら、まだ仕事残ってますけど」と光っている。
そしてその真ん中に、聖女が立っていた。
純白のローブ。光輪みたいなフード。清楚な微笑み。額に浮かぶ汗は、雨の名残ということにしておく。
問題は、その聖女が――偽りだという点だ。
中庭の端で、私は黒革の帳を抱え直す。王国公文書局・第六記録係、見習い書記のユストである。配属初日に「追放会議の議事録を取れ」と言われ、うっかり返事をした私が悪い。
「では、会議を始める」
追放会議議長が咳払いし、卓上の砂時計をひっくり返した。さらさらさら、と時間が落ちていく音だけが、濡れた中庭にやけに鮮明だった。落ち切ったら追放――そう宣告された瞬間、偽の聖女は天を仰ぎ、まるで当然のように微笑んだ。
「もちろんです。すべては神の御心のままに」