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電車の脱線事故に巻き込まれた三十二歳のエンジニアは、気が付くと異世界の伯爵家の跡取り娘として生まれ変わっていた。 魔法と魔物が存在するその世界では、五歳になると教会で“スキル”を授かり、その適性に応じて戦い方が決まる。 領地を守る貴族。 魔物を討伐する軍。 そして、王に仕える騎士達。 伯爵家の後継者として育てられていく中で、彼女はこの国の為に戦う事を当然の使命として教えられていく。 ――忠誠は、美徳であると。 やがて、それぞれ別の場所で始まった二つの戦記は、同じ時代を生きながら交わる事なく進んでいく。 祖国を守る為の戦い。 王に忠誠を誓う戦い。 だが、幾つもの選択と決断の果てに。 二つの戦記は、一つの結末へと収束する。 それは―― 自国の王を討つという、反逆の決断だった。
伯爵家の長女として生まれ変わった私は、この世界で家督を継ぐ資格を持っていた。 女性でも当主となれるこの国では、継承順位第一位である私は“将来の伯爵”として育てられることになる。 五歳の洗礼で授かるスキル。 領地を守るための軍。 魔物に備える冒険者制度。 平和に見える日常の裏で、国家と領地は常に危機と隣り合わせだった。 前世の知識で、戦争が国家をどう壊すのかは知っている。 物流が止まれば都市は飢え、 物価統制は市場を歪め、 同盟は時に裏切られる。 だが――この伯爵領にとっての“最適解”までは分からない。 数年後、隣国との戦争が始まる。 出兵か、中立か。 通商か、断交か。 難民を受け入れるか、拒絶するか。 伯爵家の継承者として、 私は幾つもの“よりマシな破滅”を選び続けることになる。 隣国の戦争は、私の物語でもあった。