あらすじ
中学3年生の夏。蒸し暑い部屋で真っ白な作文用紙を前に、気だるい午後を過ごしていた「私」。そんな日常は、妹と一緒に拾った一匹の黒猫「クロノスケ」によって少しずつ変わり始めます。
ある日、買い食いから戻った私が目撃したのは、二本足で立ち、高級おやつを探して喋り出すクロノスケの姿でした。自称「村で一番賢い魔法使い」だという彼は、一生に一度だけ、50%の確率を100%にする「ちょっと運が良くなる魔法」を使えると言います。
しかし、嵐の夜。塾の帰りに車と衝突した私は、生死の境を彷徨う暗闇の中で「分かれ道」を選択し続けることになります。病院で目を覚ました私に告げられたのは、いくつもの偶然が重なった「奇跡」の生還。
日常に戻った私のそばには、もう言葉を発さなくなった、ただの可愛い黒猫がいました。あの日、魔法使いが何を選択したのか。失われた魔法と、それによって繋ぎ止められた何気ない日常の尊さを描く、ひと夏の不思議な物語。