あらすじ
違法薬物〈LDT〉を製造する秘密研究施設・LINARIA。
そこでは、人の恋愛感情や幸福の記憶を抽出し、強い多幸感をもたらす代わりに、やがて深い絶望へと突き落とす“劇薬”が生み出されていた。
公安の潜入捜査官・柿崎いのりは、施設壊滅任務のためLINARIAへ送り込まれる。
だが調査の果てに彼女が辿り着いた研究の中枢には、かつて特別な関係にあった女性、愛華の姿があった。
しかもLDTの核となっていたのは、愛華自身の記憶だった。
任務を遂行すれば、研究所は壊せる。
けれど、それは愛華を失うことと同義だった。
組織への忠誠と消せなかった想いのあいだで揺れるいのりは、やがて取り返しのつかない選択をする。
燃え落ちていく研究所。
壊れていく秩序。
そして、もう後戻りできない二人だけに残された、最後の薬。
これは、記憶を失ってもなお消えない愛と、幸福に囚われた者たちの、静かで救いのない恋の物語。