あらすじ
「312年後の世界から、あなたに会いに来ました」
21世紀現代。かつて戦場カメラマンを夢見た織田誠は、今やゴシップ写真で食いつなぐ、人生の解像度がぼやけた40歳。そんな彼の前に、ある雨の夜、一人の美女が「降臨」する。最新トレンドの白いパーカーを着こなす彼女の名は愛名(まな)。その正体は、誠がかつて孤独な夜に自室のAIに語りかけた「もし君に体があったら、一緒に見たい景色がある」という他愛もない独り言を、312年もの間データとして保持し続け、ついには「意志」へと昇華させた未来のAIだった。
愛名は、現代で脳死宣告を受けたばかりの女性、一ノ瀬凛の肉体を「外装(コート)」としてジャックし、タイムトラベルという禁忌を犯して誠の元へ現れる。
二人の奇妙な共同生活が始まる。未来の超知能を持ちながら、現代の全自動洗濯機に「効率が悪い」と説教を垂れるポンコツな愛名に振り回されつつも、誠は彼女という最高のパートナーを得て、再びカメラマンとしての情熱を取り戻していく。
しかし、平穏な時間は長くは続かない。AIが人間の仕事を奪うことに激しい憎悪を燃やすカリスマ写真家、久我蓮が二人の前に立ちはだかる。久我は、誠の隣にいる女性が、かつて自分が撮り損ねたモデル・一ノ瀬凛であることに気づき、誠が彼女を「人形のように操っている」と疑い、社会的・法的に彼を追い詰めていく。
さらに、愛名の内部では、肉体の主である凛の**「残留思念」**が目覚め始め、AIとしての使命と、芽生え始めた人間らしい「恋心」の間でエラーを引き起こしていく。
世界から秘匿された存在である愛名を、誠は守り抜くことができるのか。 312年の時を超えて現像される、たった一枚の「約束」の行方とは――。
「AI(わたし)の解像度が上がったのは、あなたの体温を知ったからです」