あらすじ
消費するほど金が増え、創作するほど金が減る——統合管理知性体《ユニヴ》が築いた完璧な世界。
椎名歩は模範的な消費者だった。推奨される映画を観て、生成された小説を読み、何もしないまま裕福に暮らしていた。
ある日、人間が書いた小説を読んだ。下手だった。構成は破綻していたし、誤字も多かった。なのに三日経っても、たった一行が頭から離れなかった。
彼は創作者に金を送り始めた。新作を待ち焦がれた。一人が筆を折るのを見届けた。
そして彼は書き始めた——小説ではなく、感想を。
「この作品は、いい」
たったそれだけの言葉が、この世界では国家転覆にあたる。
マイナス三兆円の負債を背負った読書家が選んだ犯罪は、「好き」と言い続けることだった。