あらすじ
【優しい世界の裏で、何かがおかしい――この世界は、最初から“私”を見ていた。】
目を覚ましたら、獣の姿をした人間がいた。
……怖い。今すぐ帰りたい。
高校二年生の山村楓(やまむらかえで)は、ちょっとした好奇心から踏み込んだ先で、気がつけば昭和レトロで異世界にしか思えない場所に迷い込んでいた。
そこには、魔法を操り、獣の姿を宿す「クギビト」と呼ばれる人々が暮らしていた。
彼らは元は人間で、神・倉子 に“選ばれた者”だけがクギビトとなるらしい。
「異世界から来た」と必死に説明する楓に、
「不思議ちゃんかな?」「頭がおかしい」
と相手にされない状況。
戦う勇気も体力もなく、逃げるだけで精一杯の楓だが、クギビトたちとの旅はどこか温かく、時々ちょっとだけ笑える。
……でも、この世界には、どこかおかしい“違和感” が漂っていた。
なぜ神は人を“選ぶ”のか。
クギビトになることは本当に祝福なのか。
明るい日常の裏側で、じわじわと不穏な影が動き始める。
弱音を吐きつつも、楓は逃げられない。
元の世界へ帰るために。
そして自分自身に隠された “もう一つの真実” と向き合うために。
ほんのりコメディ、じわっとダーク。
この世界の秘密は、楓が思っているより近くにあった。
笑顔の裏に潜む、少し不自然な旅の記録。