ランダム10

作品の中から、日替わりで各ジャンル10作品をランダムにピックアップ。思いがけない作品との出会いをお楽しみください。 (2026-03-20)

病死という名の自殺

父は病で亡くなった。 ごく普通で、ありふれた突然の死だった――はずだった。 ある日、父の友人だと名乗る男が現れ、 静波に奇妙な申し出をする。 「一緒に、あなたのお父様の死を調べてほしい」と。 知ったところで、人生が変わるわけでもない。 面倒なだけだと分かっていながら、 静波はその言葉を聞かなかったことにできなかった。 病死とされていた父の死の奥に、 何があったのか。 それを知ることは、 娘である自分にとって、本当に必要なことなのか。 これは、 「病死」という言葉の裏側を辿る、 ひとりの娘の静かな物語。

ヒーローショーと再変身 スーツアクターが本物になってしまう一日

大野成一、27歳。平日は事務職、週末だけ戦隊ヒーローのスーツアクターをしている。 地方の夏祭り営業を終えた成一は、楽屋で異変に気づく。 スーツが、脱げない。 猛暑の中、テンセイレッドの姿のまま街に出た成一は、迷子、ひったくり、熱中症——次々と降りかかるトラブルに巻き込まれていく。 これは、惰性でショーを続けていた男が「本物」になるまでの、たった一日の物語。 カクヨム・Caitaにも投稿しています

早い春の犬

ある日突然、世界中の動物が人間の言葉を話し始めた。 高校生の悠斗の家でも、十四年間一緒に暮らしてきた犬・コタロウが静かに言葉を持つ。 戸惑いながらも対等に語り合う二人。 家族の形は揺れ、父との衝突、学校での講話、そして「選ぶ」という問いが、日常の中に生まれていく。 やがて訪れる、避けられない時間。 声を持ったまま別れを告げるのか、それとも――。 これは、言葉を得た一匹の犬と、選ぶことを知った少年の、 少しだけ早く訪れた春の物語。

十年越しの返事

36歳独身、派遣社員の木下春香は、高校時代の親友・美咲から毎年届く年賀状に、10年間返事を出せずにいた。 結婚、出産、二人目の誕生、マイホーム購入——美咲の人生は順調に進んでいく。一方、春香は会社をリストラされ、恋愛も友人関係も停滞したまま。年賀状を受け取るたびに、「報告できる近況が何もない」と苦しみ、SNSで友人たちの幸せを見ては自分と比較し、劣等感に苛まれていた。 「幸せな人に、幸せじゃない自分が返事を書く資格はない」──そんな歪んだ思い込みが、春香の心を縛っていた。 しかしある日、過去の年賀状や美咲からの手紙を見返すうちに、春香は気づく。美咲の笑顔の裏にも、きっと様々な苦労や悩みがあること。そして、自分が「何もない」と思い込んでいただけで、実は日々の散歩、読書、絵を描く時間、家族や友人との繋がりなど、大切なものをたくさん持っていたこと。 「世間の物差し」ではなく「自分の物差し」で人生を測る勇気を得た春香は、ついに10年ぶりに美咲へ返事を書く。 それは友人への返事であると同時に、「私の人生は、これでいい」という自分自身への答えでもあった。